「ス・・パイ?」

「ええ。」

「スパイって、あの、スパイ?」

「はい。」

 

なぜか彼女は嬉しそうだ。

しかし次の言葉が、キラをもっと驚かせた。

 

「潜入して参りますわ。ザフトに。」

 

 

【スパイ大作戦】

 

 

つまりは、こういうことらしい。

 

ラクスとバルトフェルドさん達がプラントへあがる。

そこで一旦彼らとラクスは別れ、バルトフェルドさん達はファクトリーへ、ラクスはザフト―ミネルバへ向かう。

ファクトリーへ行き、情報収集をしたバルトフェルドさん達は宇宙へ。

同じくミネルバにて情報収集を終えたラクスも、彼らと合流すべくエターナルへ行き、AAへ戻ってくる。

 

上手くいくのだろうか。

 

『今、ミネルバは補給の為プラントへ戻ってきていますわ。』

 

その機会を狙って潜入するのだと、彼女は言っていた。

 

『わたくしは、デュランダル議長が何か鍵を握っているのではないかと、そう思っております。』

 

「行かないで。」この一言が言えたら、どんなに楽だろうか。

だけどそれは僕のエゴだ。

彼女は変わろうとしている。それを引き止めるなんて、できない。

もうこれ以上彼女の苦しむ顔を見たくない。

 

目を瞑る。

彼女の言葉が、何度も繰り返される。

目を開く。

無機質な天井が目に入るだけだった。

 

そういえば、最近ろくに寝ていない。

ラクスが狙われて、母と別れて、カガリをAAに連れてきて・・・

本当に、色々な事があった。

これまでの平穏だった日々が、記憶の片隅で今にも消えそうだ。

 

「ラクス・・・・・」

 

かすれるほどの小さな声が、電気の点いていない部屋に響く。

すぐにそれは音となって、暗くて黒い場所に呑み込まれる。

不意に眠気が襲ってきたキラは、抗うことなく、ただ受け入れた。

 

 

 

 

 

次の日。

 

艦内は慌ただしかった。

 

ドアの外で、何人もの人が通り過ぎていく足音が聞こえた。

 

キラは寝返りをうつ。とっくに目は覚めていた。

 

しばらくして足音が止んだかと思うと、誰かの話し声が聞こえてきた。

 

「でも、今はまだ・・・」

「もう少し後からでも、ラクス様。」

「キラ様は寝ておられますし」

 

“ラクス”という単語を聞いて、思わずキラは身体をおこす。

 

彼女が入ってきてもいいように、キラは掛けてある軍服に腕を通す。

 

「もう、時間がないのです。キラ、開けますわよ。よろしいですか。」

 

答えるより先に、ドアの空気音が聞こえる。

 

キラは慌てて髪を手でとぐ。寝癖はついていなかった。

 

もう一度、空気音が聞こえる。ドアが閉まったようだった。

 

部屋はまた、静かになった。二人きり。

 

キラは、ラクスの顔を見ることができなかった。彼女が入ってきてから、ドアに背中を向けて俯いて立っている。

 

「・・・どうしたの?」

 

そのままの状態で、キラは尋ねた。

 

昨日、ラクスはプラントへ行くと言った。予定は「明日」だと。

 

今、ラクスは僕の部屋にいる。「どうした」なんて、答えは一つだ。

 

「キラ、こっちを向いて。」

 

部屋に入ってくる前とは、ずいぶん違う声色だ。

 

知っている。彼女がこんな風に話すのは、僕の前だけだってこと。

 

「お願い、キラ。」

 

彼女はもう一度、僕の名前を呼んだ。

 

 

振り向いたキラは、言葉を失ってその場に立ち尽くした。

 

 



ああもう、楽しいです(苦笑)
キララクだと妄想は広がるばかり・・・(ニヤリ
ところでオーブではなんで「キラ様」「ラクス様」なんでしょうね?
って今更な感じですが。。
なのであえてAAでも様呼びにしてみましたw