「だからわたくし、見て参りますわ。」

 

 

 

―その言葉が全ての始まりだった。

 

 

 

【スパイ大作戦】

 

 

 

「綺麗・・・」

 

隣で、彼女はそうつぶやいた。

僕も、そう思う。

 

ふわっと、甘い香りがする。

彼女の小さな頭が、僕の肩に触れる。

それを受け入れて、そっと彼女の肩を抱く。

 

―暖かい。

 

ずっとこうしていたいと思う。

今背負ってるのもの全部捨てて、彼女と二人だけになれたら。

どれだけ幸せなんだろう。

 

 

「本当に、綺麗。」

 

彼女は繰り返した。

 

「うん。」

 

目の前に広がる、青い青い、どこまでも続く海。

海底を照らすAAの光が、その周辺を優しく包み込む。

とても心地良い。

 

「カガリさんと、お話しましたの・・・」

 

変わらぬ声色で、ラクスはつぶやくようにそう言った。

 

え?

 

キラが聞き返そうとするより先に、ラクスの唇が動く。

大きな決断をして誰かにそれを示す時、人はこういう表情をするのだろうか。

 

「わたくし、プラントへ行ってみようかと思いますの。」

 

一瞬、彼女の言っている意味がよく分からなかった。

 

「そんな、ラクス・・!だって君は・・・」

「わたくしも、もう大丈夫ですわ。」

 

彼女の瞳は、まっすぐだった。

―青。

海と同じ瞳が今、僕に向けられている。

 

「ラクス・・・」

「行かせて下さいな、キラ。」

 

彼女は静かに微笑む。

大切な人。

側にいて僕が守る、ずっと。

そう心に誓ったのは、ずいぶん前。

 

「だけど行くっていったって・・そんなの出来るわけ」

「大丈夫ですわ。お手伝いして下さる方がいますの。」

 

 

―クライン派、か。

 

ちらっと、ダコスタの、あの脳天気そうな顔が脳裏に浮かぶ。

 

キラは心の中で舌打ちした。

 

 

「・・・プラントへ行って、何するの。」

 

分かってはいるが聞くしかなかった。

彼女が僕から離れるはずがない。

頭の隅でそう思っているのは確かだ。

 

―ラクスは、僕が守る。僕が・・・

 

だけど彼女の口から出た言葉は、あっさりとキラの予想を裏切っていた。

 

 

「・・・スパイをしようかと思いますの。」

 

 

 



ええと、何話だっけ・・・?戦士の条件だったかな?
ごめんなさいよく覚えてません;;
とりあえずあの時の二人が印象的だったので、違う形で書いてみたいなぁって思って。
この話はまだまだ続くので、気長に見守ってやって下さい。。