出会わなかったら、知らなかった。こんな気持ち。
恋愛ゲーム―Platonic game―
桜舞い散る春の終わり。
薄桃色の花びらが、風に吹かれて枝からさらさらと零れていく。
ふわっと咲いたピンクもいいけれど、空の蒼にはグリーンの方がよく似合ってる。
葉桜だな
と、柚須翔はそんな事を思いながら、頭に降りかかった花びらを払いのけた。
少し立ち止まる。
葉と葉が擦れ合う音以外、何も聞こえない。
これまでは慌ただしい朝に慣れすぎてたけど、こんなゆっくりした朝も悪くない。
そこで我に返って携帯を開く。
「やべっ遅れる。」
再び学校へと続く道を歩き出した。
※※※※※
「ショウ、遅い!遅刻したらどうするんだよ!」
少し離れたところで翔の幼馴染み、度会達也が呼んでいる。
翔よりは10分は早く来てるだろう達也に向かって、大して思ってもいない“ごめん”のポーズをしながら彼が待っている所へと駆け寄った。
「タツ、悪い。」
「やだよ、僕。入学してちょっとの間で遅刻魔なんかの仲間入りするの。」
そう言ってジロリ、と睨んでくる。
可愛い奴がするとちょっと迫力あるから怖い。
翔はへいへい、と気の抜けた返事を返しながら、隣に並んで歩く達也の頭を撫でた。
「もうっ!やめろよなっ!」
うん、やめません(笑)
俺の毎日は、こうやってタツをからかうところからスタートするんだから。
俺とタツは、物心ついた頃からずーーっと共に過ごし、どういう訳か小学校以来違うクラスになったことがない。
嘘みたいな話だけど、本当にあるのだから仕方がない。
これはもう、くされ縁の何者でもないと思う。
とゆうか、裏で誰かが画作してんじゃねぇの・・・?
なんて事も思ったりするけどさ。
ま、そんな偶然ってのもこの世にあるわけで。
高校まで同じ、ついでにクラスも一緒。
こうなったらもう、一緒に登校するしかなくなってしまう。
中学の時もそうしていたんだけど、俺のあまりの遅刻の多さに、呆れたタツはさっさと先に行くようになって。
高校からはちゃんとするんだよ!
なんてタツに言われて半ば無理矢理一緒に登校する事になった。
だけどそのお陰で、こんな朝が発見できるようになったんだから、その辺はタツに感謝だ。
「タッちゃぁぁああああん!」
「ほわっっ?!」 「ぐぁっ」
なんか遠くから声が近付いてくるなーなんて思った瞬間、後ろから俺らの間に割り込んできた奴‥―
渡部和俊。
入学式の時からやったら絡んできて、いつの間にか俺・タツ・トシの三人で行動する事が多くなってしまった。
今日も始まるのか・・・?
翔は小さくため息をついた。
「グッモーニンエブリワーン!今日も今日とて可愛いなぁタッちゃんはよぅ!」
朝から元気なこって・・・
トシはいつでもうるさいから、どこにいるかなんてすぐ分かる。
俺、目隠しされてもこいつ見つける自信、絶対あるし。
「やーめーろー!!」
隣で和俊に頭をぐしゃぐしゃとかき回されて、さすがの達也も全力でそれを制止する。
いいように遊ばれるタツ。
他人にちょっかいを出す事を生き甲斐にしている(としか思えない)トシ。
そんな二人をいつも傍観する俺。
この関係が後にとんでもない事態を起こす事を、この時はまだ知る由もなかった―――。