言葉が、出ない。カガリは、頭の中が真っ白になった。カガリだけじゃない。その場にいたAAクルーは皆、かたまって動くことができなかった。
「キラ…?」
キラが言葉を発するのと、金髪の少女が言葉を発するのは、同時だった。
「知らない…僕は…。」
大事なことを思い出しそうな、頭の奥で何かが叫んでいる。
『…ラ!キラ!!』
赤い髪の…
「……!!フ…レイ……は?フレイは?!」
キラは、それまで彼の背中を支えていた、カガリとミリアリアの手を払いのけた。
「僕が、守るっ…て……だからっ…!」
「キ、キラ、何を言って…」 「キラ!フレイはっ…」
ミリアリアが言おうとすると、マリューはそれを制するかのように、キラに話しかけた。
「キラくん…あなた、さっきまでミネルバと戦闘して…意識を失ったのよ…覚えてる?」
「ミネ…ルバ…?何を…」
キラの脳裏に、先ほどの戦闘シーンが、コマ送りのようにゆっくりと流れた。
『―これ以上戦いたくない。人が殺し合うなんて―。』
僕は、闘いたく、なかった。
―――しかし、仕方のないことではありませんか?戦争であれば―。
「…っ!!」
そうだ。
僕はさっきまでコックピットの中にいた。若い、モビルスーツパイロットと戦闘をしていたはず。なのに……。
どうして今ごろあの娘が…?あの、赤い、髪の…
ふいに、ひびわれそうな頭痛を、彼は感じた。
『―あんたはっ………ステラを殺した!』
「っつ…!!」
記憶が、みるみる蘇ってくる。
『止めようとしたのにーーーーー!!!』
「あ…ぁぁ…、う…ぁ、はっ……」
また、知ってしまった。憎しみの連鎖を。その先の、果てのない終わりを。
「うぁぁ!」
「キラ!」 「キラくん!」
そして、彼はまた、闇へと落ちていった――。