嘘で誤魔化すほど子供ではなかったし、
過ちを認めるほど大人でもなかった。
【幼なじみ。】
「ねぇ、キラ。今日の放課後」
「あ、ごめん、今日はちょっと無理かも。」
まだ最後まで言ってないのに。
「最近毎日忙しそうですわね。」
「ラクス・・・怒ってる?」
カーテンが、風に揺れて規則的な動きをしている。
教室には二人以外、もう誰も残っていなかった。
遠くで、誰かの笑い声が聞こえる。
今なら・・言えるかな。
「あの・・・キラ、」
「キラぁ〜帰るぞぉ」
「キラ先輩〜一緒に帰りませんかぁ?」
ガラッ
教室のドアを開ける音がして、金髪の少女がひょこりと顔を出してきた。
見覚えのある子。
時々、彼と仲良さそうに歩いてる。
くすくす。
違う学年の生徒もそこにいる。
その二人の少し後ろで、黙って俯いている女の子の姿が見えた。
「あぁごめん、今行く。」
キュッ。
靴を擦る音がした。
・・・今日こそ言えると思ったのにな。
「あっ。」
突然、彼が振り向いた。
「ばいばい、また明日。」
キュッ
「あれ、ラクスだ。何、もしかして取り込み中だった?」
「えっ、ううん大丈夫。」
「えぇ〜先輩達ってそういう仲だったんですかぁ〜?」
きゃはははは―――…‥
廊下に響くバタバタという足音が、耳にまとわりついて消えなかった。
教室は、既にオレンジで染まっている。
「ばい、ばい。」
また明日――か。
明日・・・明日こそ言えるかな。
ううん。
言わなきゃ。
『好き。』
って。