【夢でもいいから】
―夢を、見た。
(キラ・・・・・・)
誰?
(キラ・・・)
僕を呼ぶのは・・・
(キラ・・)
ピンクの・・髪。
(キラ、いらっしゃい。キラ。)
両手が、そっと伸びてくる。
「誰・・・?」
甘くて、心地よい気分。
(キラ。おいで。こっち。)
目を、細める。眩しくて、顔が見えない。
「カガリ・・・?」
あれ・・こんな感じだったっけ。
カガリは、僕で。
僕は、カガリで。
似てるけど、少し違う。
だけど、・・・・
「きゃっっ??!」
急に小さな悲鳴が聞こえて、キラは目を開けた。
そよ風が、カーテンを揺らすとともに、薬品のにおいも連れてくる。
春の風。
ああ、そうか。
キラはだんだんと覚醒する頭で思った。
ここは、保健室で。
授業さぼって、寝てたんだ。
夢を見ていた気がした。
「んっ・・・キラ、ちょっと、」
もそもそと自分の顔のすぐ近くで動くものがある。
そこでようやくキラは彼女の存在に気付いた。
ラクスが、キラの上に乗っかかっている。
キラは完全に目が覚めた。
「えっ?!ちょっと・・・うわ!!」
赤面して、キラは抱いていた両手を勢いよく離す。
そして慌てて起きあがった。
「ごめん、寝ぼけてて・・!えと、すみませんっラクス・・・先生。」
どうやらキラは、起こそうと近づいてきたラクスを抱き寄せたらしい。
寝ぼけていたとはいえ、突然の出来事にラクスも顔を赤くしている。
「すみません、僕・・・・あの、授業戻ります。」
掛けていたハンガーを手にとって、手際よく上着を着る。
そのままキラは、逃げるように保健室を後にした。
「・・・・・ビックリした。」
ラクスはまだほんのり赤い顔を手で抑えながら、さっきまでキラがいたベッドに腰掛ける。
相手は、子供でしょう。
座ったベッドはまだ暖かい。
風が頬を冷やすまで、少しだけ横になった。