その日は、今でも、とても鮮明に思い出せる。

晴れた空、白い雲、輝く太陽。どこまでも続く蒼、あお、アオ―――

そんな日に君に出会えたのは…そう、運命だ。と。そう思う。あの日から、俺は君を―

 

Melody

 

「ラァ〜ラ、ラ ラァ〜…」

 

―歌が、聴こえる。ひどく懐かしい歌。

 

「上手、だね。歌が好きなの?」

「ウタ…?ウタ、スキ。」

 

月と同じ色の髪が、風に吹かれて乱れる。

 

歌うように話す子だ、と“シン”は思った。

 

「他にも何か歌えるの?」

「ウン…ウタ、スキ。」

 

応えたのは、“ステラ”という少女だった。

 

「シン、ウタ…スキ。ステラモ、ウタ スキ。」

「うん、好きだよ。」

 

この子はどこの子なのだろう。

そんなことを思いながらシンは、目の前にいる少女に興味を抱いていた。

さっき海岸から落ちたこの子。

くるくる楽しそうに踊っていた姿は、まるで天使みたいだった。

そして海に落ちてしまったところを助けた。

今は助けが来るまで洞窟でその少女と共にいる。

 

「ステラはどうしてあんなところにいたの?」

「ウミ、スキ、ダカラ…」

 

そう言うとステラは、目の前に広がる蒼い海を見つめた。

 

―不思議な子。

 

シンは思った。

自分の周りにいる、例えば“ルナ”や“メイリン”とはまた違った感じの女の子。

彼女といると、自然な自分でいられる気がする。

 

ステラと話しているうちに、助けが来た。

シンの仲間―“アスラン”だった。

別れの時がきた。

 

「…シン、イッチャ、ヤダ…」

「ステラ…」

「シン、ステラトイル…ステラ マモル ッテ…」

 

―『守る』。

 

海に落ち半狂乱になったステラに、シンが言った言葉だった。

 

「守、る……ステラも、一緒に行く?」

 

シンは、同調を求めるように問いかけた。

 

俺はどうしたいんだろう。でも、きっとこの子も戦争で家族を―。

 

 

 

静かな夜に、一台の車は去っていく。

少年と少女を乗せて。

 

後に残るのは、風に流れて聞こえるやわらかな歌声。

 

fin.






シンとステラが再び出会ったディオキア編。。
こうなっていれば二人は幸せだったのかも…
っていう秋の願いから書いたものです。。